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デザイン関連の『もとまちベース』を自営されながら
「体験工房 赤い屋根」(南相馬市鹿島区)や
本町商店会(南相馬市原町区本町)などのデザインサポートをなさったりと
幅広く地元に根ざした地域活動に携わっていらっしゃる
神戸から南相馬へ移住された、加納 智明さんへのインタビューです。
〇 プロフィール
もとまちベース
加納 智明(かのう ともあき)
住所:福島県南相馬市鹿島区江垂字中舘22
連絡先:
メール:syoutyann@mac.com
ホームページ:
「もとまちベース」facebookページ
https://www.facebook.com/motomachibase/
Q1:相双地域の市町村へ来ることとなった「きっかけ」は、どのようなことでしたか。
神戸でやっていたデザイン教員の職から方向転換したいと思っていたときに
東日本大震災が起こり、最も気になっていた地域と縁ができたこと。
阪神淡路大震災の当時神戸も「デマ」でひどい思いをしたのに
東日本大震災と、あとに続いた東京電力原子力発電所事故の
根も葉もない情報を信じ込んでる方が多くいたことが虚しく
また、本当のところはどうなのかを確かめたかったという思いがあったこと。
そして、『これから動くこと(2013年の“じゃぶじゃぶ池”のプロジェクト)で
デザインできる人が欲しい』と声をかけられたことと
『カノウさんは南相馬に行ったほうがいい』と神戸の仲間に強く背中を押してもらったことです。
※ 最初に加納さんが制作のお手伝いをした“じゃぶじゃぶ池”のプロジェクトのツール
Q2:現在お住まいの市町村へ、来てみていかがでしたか。
一番最初に驚いたことは、町の子どもたちが元気で、ちゃんと挨拶のできる子が多いと感じたこと。
子どもたちから先に挨拶されたり、笑顔を向けられる。
また、町の人たちにもギズギスした感じがなく、町全体に時間がゆったりと流れている印象で
子どもたちの闊達さと言うか、大人たちの仕事の取り組み方にも
無駄がないというか、パッとやってパッと切り替える潔さなどに感動し
神戸にないもの(こちらでは当たり前だけど、神戸にはない感覚)や
失われつつあるものが、ここにはまだ残っていると感じた頃に
津波に遭った浪江の某小学校の教室で見かけた職員の資料棚の4分の1ほどが
地域の文化だったり郷土資料だったことに衝撃を受け
当初は3ヶ月くらいで神戸に帰る考えでいたのですが
『その感覚の違いやその成り立ちみたいなものをもっとしっかりつかみたい』と思い
『もうしばらくここにいてみよう』と決めました。
[相双ビューロー]:公園でプラレールをつなげてあそぼう!(2014.6.17:掲載)
Q3:現在お住まいの市町村の、おすすめスポットをご紹介ください。
・南相馬市立中央図書館
・真野川上流(鹿島区内から飯舘へ向かう県道267、268号)
町全体に言えることなのですが、障がいをお持ちの方への駐車場とか公園にトイレがあることとか
公共福祉的なものや考え方が自然と当たり前のようにあって
その感じがわかりやすい例が、中央図書館かなと。
神戸と比べてしまう。
県道267、268号の渓谷や景色が好き。
ここだけではないですが、アスファルト舗装してあるものの
自然を削りすぎたり開拓しすぎたりしていない
余計な人の手が入っていない感じがいいなと。
Q4:移住・定住されるにあたって、ご利用になった支援制度等はありましたか。
ないです……
Q5:これから移住・定住を検討さている方へ、メッセージをお願いします。
イメージで移住・定住を決める前に、一週間・一ヶ月などの短期ステイを繰り返したりして
実際に地元の人たちの話を聞き、町の時間間隔・空気感を
ある程度つかんでから考え決めていくことが大事だと思います。
あとは先輩移住者さん『たち』とコンタクトを取って、話を聞いたりするのも大事。
Q6:取組のきっかけは、どのようなことでしたか。
じゃぶじゃぶ池と、もとまつりのお手伝いが、きっかけとしてあるものの
『この町で新しい取組をしていくのであれば神戸市民であるままでは、やっぱ変やな』と思い
まずは、地元企業で働いたりして地元の人に信用してもらうこと
町の人たちの声を拾うことや、本音で話してもらえるような空気づくりを意識しました。
そして、表向きはデザイン事務所のような場所として立ち上げたものの
どちらかというと、この町の人たちとコミュニケーションを取っていく中で
ウチに秘めたポテンシャルに気付いてもらったり
実際にカタチにしていくような動きをしていく拠点にできればと思い立ち上げました。
またこれを機に、多少下手でも『描く』ことがコミュニケーションをする際の
大きな武器になるという考えも広げていけたらとも思いました。
そんなことを試行錯誤取り組んでいく中で
『地域を知ること。伝え残すこと。そういった土壌が震災のはるか昔からこの地域にはあって
それが子どもたちの挨拶や町の人たちの人となりや笑顔につながってるのだ』と
改めて強く感じるようになりました。
[相双ビューロー]:【南相馬市高見公園】じゃぶじゃぶ池(2013.8.31:掲載)
Q7:力をいれていることは、どのようなことでしたか。
仕事としては南相馬の各団体、店舗さんなどの営業ツールのデザインやイラスト制作ですが
それらの制作仕事やその他活動を通じて一見頑固そうな親父さんとかと話をすることが
おもしろいと感じるようになりました。
この町でこれまで関わってきた方々はブレないものを必ずと言っていいほど内に秘めていて
そのブレないものはなんなのかを探り探り拾い上げていく過程で
『無理くりひとつ方向へまとまろうとするのではなく(皆で「いいね、いいね、右ならえ」でなく)
それぞれが勇気を持って我を出して行って良いんだ』と
元々話下手で変に頑固な自分の考え方を肯定してもらえた感覚を覚えたこともあり
『ブレないなにかを一緒に明確化していく作業』に力を入れて仕事や活動をするよう意識しています。
また、震災きっかけでなく震災前から移住に関する活動をされている方たちのお手伝いとして
農家民宿をされている方々が取り組んでいる活動(体験工房赤い屋根)のお手伝いをさせてもらってます。
その活動でされている体験プログラムは、簡単な農業系の制作講座をはじめ
昔あそびや季節の郷土料理など今話題になっている食育や情操教育につながるプログラムと感じていて
農家民宿の方々に無理をかけずにいい方向に活かしていくことが出来ないかと
お手伝いしながらその機会をうかがっています。
体験工房 赤い屋根facebookページ(URL:https://www.facebook.com/akayane/)
Q8:楽しみにしていることは、どんなことですか。
神戸での経験と南相馬での経験を融合することで活かすことができそうな動きが出てきていて
今後どう展開していけるのかが楽しみです。
※ 加納さん制作のポスター・フライヤの一例
Q9:これからチャレンジしたいことは、どんなことですか。
南相馬と神戸を軸に、先に答えたこれまでの自分の経験と知識を活かした動きをテーマにした
多拠点活動にチャレンジしたいです。
正社員就職に反して『バイトの掛け持ち』と言うと印象が悪いのですが
それぞれの人たちが得意とする分野をそれぞれの人たちの配分で助け合って
仕事をするような仕事スタイルも急速に人出不足となっている中で肯定されつつあり
その生き方スタイルを南相馬から開拓して発信していきたいと思ってます。
また、以前就職担当であったことが、自分の活動のコアになっている部分でもあり
例えば、野馬追に関わる甲冑師だったり、旗指物だったり、出陣だったり…と
その仕事の本質を知ることで興味を持って「やりたい!」と言うタイプの子は
必ずいると経験上確信しているので
そのような後継者に困っているところと
やりたい子たちをつないでいくような取組を実現したいです。
Q10:その他、ございましたらお願いいたします。
福島・南相馬の、魚・野菜……食べもんめっちゃうまいで!
※ 体験工房 赤い屋根で、農家のお母さん方と伝統食や“てづくり料理”